税金は取りやすいところから取る、というのが鉄則らしいです。税金を徴収する公務員の人数も限りがあり、法律という枠内で効率的に税金を集めるために最もコスパが良いのは、サラリーマンから源泉徴収することです。
例えば会社や個人事業主などは、提供した価値なりサービスを販売してお客様から対価となるお金をいただき、その中で販売するまでに要した費用などをコストとして差っ引いて、さらに事業外の利益や損益を計算し、その上で利益が出た額に応じて税金が決まります。(法人はそれでも消費税や事業法人税や資本金1億以上は法人事業税)
一方で、サラリーマンがまずは給与金額に応じて、源泉徴収という名で給料をフル金額でもらう前から天引きされ、その後に差っ引き過ぎた税金を取り返すために、年末調整なり必要に応じて確定申告をします。近年法制が変わり、サラリーマンであっても経費請求できる方法もありますが、これを適用できる方は本当に一部の方だけでしょう。
このページでは、給料明細に出てくる税金・保険項目を整理したいと思います。あわせて過去からの税率がどのように推移してきているかも整理します。
【まとめ】2種の税金・4種の保険料
自助努力でどうしようなく天引きされてしまう税金・保険料。納税は国民の義務、ということで果たすべき義務ということで税金はわかりますが、保険料もあわせて天引きされています。
税金の税率や保険の支払い金額比率は、雇用保険を除き、増加傾向にあります。これにより現役世代の税負担率は年々増えています。よって、30年前の額面年収と今の額面年収では可処分所得の違いが明らかなのは明白であり、源泉徴収以外の消費税をはじめ、その他税金含めて今の現役世代は、現在年金をもらっている方よりもハードゲームになっているといえるでしょう。
税金
政府からすると、サラリーマンは最も税金を徴収しやすい類でしょう。納税は国民の義務であることに異論はまったくありませんが、税負担は決して少ないものではありません。
所得税
・1月1日から12月31日までの1年間に得た所得額に応じて課税される税金(当年の見込み所得に基づいた課税)
・累進課税制度により、給与が多い人ほど税金係数が高くなる
・見込み金額を事前に徴収しておき、年末に帳尻をあわせるために納税者が自ら「年末調整」をすることで、取られすぎた税金を取り返せる。(申請しないと返してくれない)
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
〜194万9千円 | 5.0% | 0円 |
195万円〜329万9千円 | 10.0% | 9万7,500円 |
330万円〜694万9千円 | 20.0% | 42万7,500円 |
695万円〜899万9千円 | 23.0% | 63万6,000円 |
900万円〜1,799万9千円 | 33.0% | 153万6,000円 |
1,800万円〜399万9千円 | 40.0% | 279万6,000円 |
4000万円以上 | 45.0% | 479万6,000円 |
令和2年以降控除額は下記です。
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円から 1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から 3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から 6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から 8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
住民税
・住民登録している市町村、都道府県に支払う税金(これらを合算して住民税)
・前年の所得に応じて課税(前年高給取りから一気に減った場合は注意)
・所得におおよそ10%程度の税率を掛けて算出される「所得割額」+それぞれの住民に均等に課せられる「均等割額」の合計額。均等割額は自治体によって金額が異なる。
自治体によって住みやすいところもあれば、そうでないところもあり、公的サービスが充実している自治体は住民が引っ越してくる可能性も高くなるでしょう。もちろん、職場との通勤利便性や生活に関する、子育て、買い物、周辺環境などもあるかと思います。
保険料
生きていれば、病気をしたり怪我することもあるでしょう。その時の医療保険として支払う健康保険。定年を迎え、仕事をリタイアしたあとに給付される厚生年金、あるいは現役時に不慮の事故等で継続して働くことができなくなってしまう場合の年金のケースもあるでしょう。それらを整理したいと思います。
健康保険料
怪我や病気になった際、病院にかかる際の医療費負担を軽減してくれるのが健康保険であり、各種手当金、一時金の財源になっています。
・医療費は3割負担。
・休業時の「傷病手当金」、出産時の「出産育児一時金」「出産手当金」の財源
・「標準報酬月額」を基に納付額が決定
・健康保険料は、半額を会社が負担
・扶養者は健康保険料を支払うことなく健康保険を利用可(扶養家族等)
健康保険料の料率は、2012年4月の10.00%からは令和2年11月時点では変化はしていませんが、過去からの変化時の推移を追ってみると、やはり増えているといえます。バブル時に一瞬だけ下がっていますが、その後また増えています。
改定時年月 | 税率 |
1960年4月 | 6.30% |
1966年5月 | 6.50% |
1967年9月 | 7.00% |
1973年11月 | 7.20% |
1974年12月 | 7.60% |
1976年11月 | 7.80% |
1978年3月 | 8.00% |
1981年4月 | 8.40% |
1986年4月 | 8.30% |
1990年4月 | 8.40% |
1992年5月 | 8.20% |
1997年10月 | 8.50% |
2009年9月 | 8.20% |
2010年4月 | 9.34% |
2011年4月 | 9.50% |
2012年4月 | 10.00% |
厚生年金保険料
現在の厚生年金の財源にもなっており、年金受給年齢に達することなく、支払っている方が障害を負った際の「障害年金」、不幸にもこれまで払っておきながら受給年齢に至らずに亡くなったしまった場合、遺族には「遺族年金」が支払われます。
・「標準報酬月額」を基に納付額が決定
・支払額の半額は会社が負担
かつては、60歳で定年を迎えたサラリーマンは、その年から年金をもらえた時代がありました。女性の場合では55歳から年金をもらえた時代がありました。しかし今や定年は伸びて、65歳。いまや70歳になろうとしています。年々高くなっていく社会保障費を財源とすべく厚生年金は増えてきています。
管理人は、今払っている金額以上に得られる便益はおそらく見込めないと思っています。であれば、源泉徴収せず、自分の判断で民間の保険に入る案もあろうかと思います。会社がその半分を払ってくれてるとはいえ、払う金額よりも貰う金額が少ないのであれば、魅了を感じません。一点だけあるとしたら、怪我や大病により障碍者となった場合の年金ですが、これさえも民間の保険会社も同様のものを提供しています。
今年金もらっている方を支えるための税金と考えるほかないでしょう。年金がもらえなければ働かなくてはなりません。定年は60歳から65歳、そして70歳までの雇用機会の確保については、努力義務として来年から施行されます。過去の「高年齢者雇用安定法」の改正の推移は以下の通りです。
●「高年齢者雇用安定法」の改正の推移
1986年 「高年齢者雇用安定法」で60歳定年を努力義務化
1990年 定年後再雇用を努力義務化
1994年 60歳未満定年制を禁止(1998年施行)
2000年 65歳までの雇用確保措置を努力義務化
2004年 65歳までの雇用確保措置の段階的義務化(2006年施行)
2012年 希望者全員の65歳までの雇用を義務化(2013年施行)
2020年 70歳まで働く機会の確保を努力義務(2021年施行)
70歳までの就労機会はまだ努力義務、の状態ですがいずれそれが義務化になることは容易に想像つきます。
この厚生年金保険料は年々負担率が増加しています。会社が折半して支払っていますが、無視できない増加率です。
改定時年月 | 総額比率 | 雇用者 | 被雇用者 (サラリーマン) |
2003年4月 (平成15年) | 13.58% | 6.79% | 6.79% |
2008年9月 (平成20年) | 15.35% | 7.68% | 7.68% |
2013年9月 (平成25年) | 17.12% | 8.56% | 8.56% |
2017年9月 (平成29年) | 18.30% | 9.15% | 9.15% |
ちなみに、2003年3月までは、賞与(ボーナス)には社会保険料が課せられていませんでしたが、2003年4月以降は、月給のみならず賞与にも社会保険料が課せられることになりました。参考までに過去の利率(給与のみ)を整理します。
改定時年月 | 総額比率 | 雇用者 | 被雇用者 (サラリーマン) |
1960年5月 (昭和35年) | 3.25% | 1.63% | 1.63% |
1965年5月 (昭和40年) | 4.70% | 2.35% | 2.35% |
1969年11月 (昭和44年) | 5.40% | 2.70% | 2.70% |
1971年11月 (昭和46年) | 5.60% | 2.80% | 2.80% |
1973年11月 (昭和48年) | 6.70% | 3.35% | 3.35% |
1976年8月 (昭和51年) | 8.20% | 4.10% | 4.10% |
1980年10月 (昭和55年) | 9.75% | 4.88% | 4.88% |
1985年10月 (昭和60年) | 11.85% | 5.93% | 5.93% |
1990年1月 (平成2年) | 14.05% | 7.03% | 7.03% |
1994年1月 (平成6年) | 14.50% | 7.25% | 7.25% |
雇用保険
会社を失業した際の失業給付金を受け取るための制度としての保険料です。不安定な時代、これは有用な保険だと思います。
・在職中や休職中であっても、「教育訓練給付制度」や「再就職手当」など、失業給付金以外で利用可
・支払額の60~70%は会社が負担
・毎月の変動あり。月の交通費を含む給与の支給額に対して、一定の料率で決定
税金というものは高くなる一方だと思っていましたが、過去10年振り返ると、近年のサラリーマン負担率が下がっていることがわかります。
年度 | 一般の事業 | 農林・水産関係の事業 | 建設の事業 |
平成21年度 | 0.4% | 0.5% | 0.5% |
平成22年-23年度 | 0.6% | 0.7% | 0.7% |
平成24年-27年度 | 0.5% | 0.6% | 0.6% |
平成28年度 | 0.4% | 0.5% | 0.5% |
平成29年~令和元年度 | 0.3% | 0.4% | 0.4% |
介護保険
1997年、消費税が3%から5%になった年に介護保険法が成立し、2000年に施行されました。40歳から65歳までの方に支払い義務があり、高齢者の介護を社会全体で支え合うための財源として使われます。日本の高齢化率は世界に類を見ないスピードで増えています。逆にいえば、高齢ではない方の人数も相対的に減ってきているというダブルパンチもあり、現役世代の負担は益々増えています。
1980年に、9.1%だった高齢化率は、40年経過して30%近くまで推移していきており、介護が必要な方の財源が足りていない実情があります。
・負担する人が限られている唯一の保険(40歳-65歳まで)
・要介護と認定された人が介護サービスを受けるための費用をカバー
・支払額の半額は会社が負担
サラリーマンの場合は、下記の計算式で保険料が算出されます。下の表にある通り、介護保険料率も年々上がっており現役世代の負担は益々増えています。
1ヵ月当たりの介護保険料=(標準報酬月額+標準賞与額)×介護保険料率
期間 | 介護保険料率 |
---|---|
2019年3月分(5月7日納付期限分)から | 1.73% |
2018年3月分(5月1日納付期限分)から | 1.57% |
2017年3月分(5月1日納付期限分)から | 1.65% |
2015年4月分(6月1日納付期限分)から | 1.58% |
2014年3月分(4月30日納付期限分)から | 1.72% |
2012年3月分(5月1日納付期限分)から | 1.55% |
2011年3月分(5月2日納付期限分)から | 1.51% |
2010年3月分(4月30日納付期限分)から | 1.50% |
2009年3月分(4月30日納付期限分)から | 1.19% |
2019年02月20日時点