京橋界隈にある大阪市立東高校(2021年3月まで)、2021年4月からは府の高校へ編入される予定です。こちらの高校は、かつて大阪大学工学部(旧大阪帝国大学工学部、旧大阪工業大学(私立の大阪工業大学とは別))さらにその前は、関西鉄道の網島駅があった場所です。遺構があるかどうか散歩目的で近くまで来た際、学校の構内に、かつてここに大阪大学工学部があったことを示す記念碑がありました。
大阪大学工学部 石碑と案内板
何度か大阪市立東高校沿いを歩いていましたが、これまでは気づきませんでした。遺構があるかないか意識して歩いていると見えてくることがあります。見えてくる、というのは語弊がありますが、「気づく時がある」と言い換えるべきでしょうか。先日、再度歩いているときに、同様に網島駅、もしくは大阪大学工学部の遺構がないかを探しながら、大阪市立東高校の正門から50mくらい南側の歩道沿いに下記看板を見つけることができました。
おお、見つけた!ただし、記念碑は中庭にあるので、部外者はそうそう入れません。最近の学校は勝手に入れませんからね。
構内見学の申し入れ
私が訪問したのは土曜日です。もちろん、学校はお休みで、グラウンドには部活動をしている学生を確認できます。正門には部外者の立ち入りを制限する看板があります。写真赤枠。
赤枠部には、下記のように記述されています。
本校に関係のない方への校内への立ち入りを禁じます。
ご用の方は受付まで申し出てください。
大阪市立東高等学校 校長
土曜日でしたが、ダメ元で中庭を見せていただこうと正門から入りまして、来客者用玄関脇にある職員室を見ると、ひとりだけ高校教諭もしくは事務職の方がいました。私が大阪大学工学部の記念碑がある構内の中庭を見学したいという趣旨を伝えたところ了承してくださり、なんとそこまで案内してくださいました。
とても立派な記念碑です。たしかに、ここには大阪大学の工学部がありました。シンプルに「大阪大学工学部 記念碑」と、「元総長 岡田実 書」と彫られているように読めます。かつてこの地にあった大阪大学工学部は、1970年に吹田へ移転しています。今振り返ると、この碑の裏側まで回って、いつこの碑置かれたのかを確認させてもらえればよかったと少し後悔するところがあります。
この碑が大阪大学工学部当時の遺構ではありませんが、その後の証拠としての記念碑を見つけることができて良かったです。休日にも関わらず、構内まで案内してくれ、高校の沿革含めてご説明頂いた職員の方(もしくは教諭)には感謝です。
大阪大学工学部 元総長 岡田實先生
同姓同名で電気学者の岡田實先生もいますが、大阪大学工学部での総長を務めた岡田先生の専門は「冶金」です。特にプラズマ研究や超高電圧電子顕微鏡の開発で大きな業績を残されました。
1930年に東北帝国大学(現・東北大学)金属工学科を卒業後、大阪帝国大学(現・大阪大学)工学部に赴任した。同学部で助教授、教授などを務め、1966年には総長に就任した。この間、溶接工学研究所の設立などに貢献し、研究面では1963年に島津製作所との共同研究で500kVの高電圧電子顕微鏡を開発した。さらに日立製作所と共同で3000kVの電子顕微鏡を作製し、1971年に大阪大学超高電圧電顕センターに設置された。
学外では、日本学術会議会員、大阪府教育委員会委員長、関西セミナーハウス理事長などを務めている。1980年秋の叙勲で勲一等瑞宝章。1997年に肺炎のため93歳で死去。正三位。
Wikipediaより
古地図との比較
1957年(昭和32年)の地図と、直近の国土地理院の航空写真をレイヤー表示させてみました。左上には、右読みで、「阪大工学部」の記述があり、建屋を確認できます。また西側の幹線道路には、当時まだ走っていた大阪市電の駅が近くです。当時市電で通っていた学生さんはさぞかし便宜が良かったことでしょう。
こちらの地図は1957年同時を振り返る色んな情報が入っていますが、大阪大学工学部の跡地、古地図に関しては以前こちらのページにまとめていますので、もしよければ参照ください。
構内に入らなければ、記念碑を確認することができませんでした。休日時に職員室にてお仕事されていた高校関係者には私の個人的な興味・関心のわがままに対して、案内や解説までしてくださり、この場でも感謝をお伝えしたいと思います。ここに通う高校生は、かつてこの場所が大阪帝国大学工学部、それも特色ある学科を抱え、多くの優秀な方を輩出し、日本の工業発展に大きく寄与された方々と、建屋や学校は違えど大きな誇りとなり得るものと思ってます。
アクセス
京橋駅からは600m
地下鉄長堀鶴見直地線からが一番近くて600mですが、京橋にはJR環状線・学研都市線の京橋駅、京阪本線京橋駅らも程よい距離です。
大阪城北詰駅からは700m
JR東西線の大坂城北詰駅からは700mの距離です。学研都市線・片町線経由の場合は、京橋駅ではこちらの駅からのほうが近いでしょう。
桜ノ宮駅からは900m
環状線で天満、大阪方面から来る場合は、京橋までいかずとも、手前の桜ノ宮駅から徒歩で移動したほうが時間的には近いでしょう。
地下鉄谷町線都島駅からは1km
谷町線都島駅から降りて南に向かいます。
南側にある本屋「立志堂書店」
2021年12月追記:高校の南側、通り沿いにあるものとある本屋さんがありました。どこでもある普通の本屋です。Amazonなどの台頭により、普通の本屋さんの経営が決してかつてほど楽でははい経営が想像されるなか、大阪帝国大学が存在していた在りし日から学生さんでかつて賑わっていたと容易に想像できる本屋さんを発見しました。
ネーミングとしては、素晴らしい名前です。当時は色んな専門書が並んでいたのでしょうか。私が見つけたときは日曜日だったため、お店が休みのようでして、実際に店舗に足を踏み入れて、今どのような本を扱っているかは確認できませんでした。
かつては市電が走っていた通り沿いにあるこちらの本屋さん、数十年前と今とで客層が変わったとはいえ、店名だけは当時のまま、そのまま商売されています。かつてこの本屋さんで本を購入、もしくは立ち読みされていたかつての学生だった方々はどのような本を買ったのでしょうか。。。
管理人はただただ想像することしかできません。もしお店が開店しているときに訪問することができ、当時をしるご主人がいれば、いろいろ聞いてみたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。