大なり小なり組織を運営する上で、いつの時代も論じられるのはその生産性でしょう。ここでいう生産性は、何かを作り出す、運営する、管理する、意思決定する、検討する等々、多くのことがあてはまるかと思います。「会社」という単位で考えるとしっくりきます。
時代は、第二次世界大戦時、米国のスパイ機関(今でいうところのCIA)が敵国組織にスパイを送り込み、そこでの活動指針にしたマニュアルがあります。それが、「Simple Sabotage Field Manual」です。原文となるマニュアルは32ページにわたって記述されています。それらはまるで大企業病としてマイナス面で今でもしばしば見聞きする内容だと思います。
敵組織を籠絡させようとするマニュアルであれば、そうならないような対策を認識しておくようにしておく必要があるかと思います。つまり、そうさせないような取り組みすることが、対策でしょう。ここではそれらを一つ一つ紹介し、その対策について管理人の案を整理したいと思います。
こんな組織にしてはいけない!
組織や会議に関する点、管理者の観点、担当者としての観点です。この通りに全てが動くようになったら、何をするにしても膨大な時間がかかり、細部にこだわるがあまり、何をするにしても多くの労力や「儀式」などを要し、競争社会では生き残れないでしょう。これを反面教師として認識しておくだけでも、重要だと思います。
1、組織・会議
- 何をするにも「指揮系統」を主張せよ。意志決定を早めるためのいかなるショートカットも認めないようにせよ
- ひたすら「演説」せよ。演説は可能な限り頻繁に、そして尋常ならざる長さで行え。論点は、長々とした逸話や体験談で形作れ
- 可能な限り、委員会(会議)に全ての項目を提示せよ。そして「さらなる調査と検討」を求めよ。委員会の大きさはできる限り大きなものにせよ。委員会は決して5人未満ではいけない
- できるかぎり頻繁に関係のない話題を持ち出せ
- 解決策が出る直後に、正確な言葉をもって押し問答せよ
- 前回の会議で決まった問題を持ち出して、その決定を再検討するように議論を蒸し返せ
1、に対する対策
もっともらしい理由付けのもと、とにかく時間を浪費させ、決めさせない、決めた後でも蒸し返し、会議を混沌にさせる取り組みをさせないようにする必要があります。そのためには、
- 会議目的の明確化 → 無駄な話を回避
- 説明時間を決めておく → 延々と話をさせない(時間内で終わらせる)
- ファシリテーターによる進行 → 論点がぶれないようにする。
少人数でも決めた事を尊重したり、権限委譲、トップダウンによる決定の厳格化でしょうか。もちろん、組織の生産性を落とさせるために、「〇〇には大きなリスクがある、すべてのリスクが払しょくされない限り・・・」等、とにかく時間をかけようとする輩もいるでしょう。意思決定者も不安も煽るでしょう。「失敗したら、〇〇さんの責任になってしまいます、もう少し議論や調査が必要では?」と悪意をもって、組織の生産性を落とそうとするスパイ、もしくは心配癖のある方に対しては、「外す」という判断も必要でしょうね。
2、管理職の立場
- 課題を与えるときは、つねに重要でない仕事から先に割り当てよ。重要な仕事は能率の悪い部下に割り当てるように心がけよ
- 相対的に重要ではない仕事に完璧さを要求せよ。ささいな点でも修正するように突き返せ
- 士気を下げ、非生産的な部下が心地よいようにせよ。出来の悪い部下に不当な昇進を与えよ
- やるべき重大な仕事があるときこそ、会議を開催せよ。
- 許認可、指示、確認などあらゆる手続きを複雑化せよ。一人で決められる事でも3人の承認が必要なように取りはからえ
2、に対する対策
こんな管理職がいたら本当に大変ですね。これではやる気のある人が腐ってしまい、勤務態度の悪い社員がますますわが物が振る舞うでしょう。(そういう社員はえてして、「私はこんなに仕事をやっている!」というアピールも得意なケースがあります)
- 100点満点至上主義からの脱却。70点、80点でも走れる時がある。むしろ走りながら考えなければならない時がある
- 部下の立場では上司の指示は従うほかないので、別の上長と相談し、この手のタイプの管理者をその椅子から降りてもらうような交渉を行う
- 承認者を少なくする取り組み
- 会議ありき、というそれではなく、少人数での調整、確認で迅速に決める
- 時には拙速も容認する
3、担当者の立場
- とろとろのろまに働け
- できる限り多くの仕事の妨げになるよう企画せよ
- 仕事は下手くそにやり、道具や機械のせいにせよ。「こんな道具では仕事にならない」と不平不満の声を発せよ
3、に対する対策
これは、上司の方の腕の見せ所ですね。
- 不平不満の種を取り除くようにする。(仕事環境の見直し、スキルが不足していればその研修)
- 進捗管理する。(必要によっては、ノルマを設ける)
英語原文
英文は以下の通りです。
Organizations and Conferences
- Insist on doing everything through “channels.” Never permit short-cuts to be taken in order to expedite decisions.
- Make “speeches.” Talk as frequently as possible and at great length. Illustrate your “points” by long anecdotes and accounts of personal experiences.
- When possible, refer all matters to committees, for “further study and consideration.” Attempt to make the committee as large as possible — never less than five.
- Bring up irrelevant issues as frequently as possible.
- Haggle over precise wordings of communications, minutes, resolutions.
- Refer back to matters decided upon at the last meeting and attempt to re-open the question of the advisability of that decision.
- Advocate “caution.” Be “reasonable” and urge your fellow-conferees to be “reasonable” and avoid haste which might result in embarrassments or difficulties later on.
Managers
- In making work assignments, always sign out the unimportant jobs first. See that important jobs are assigned to inefficient workers.
- Insist on perfect work in relatively unimportant products; send back for refinishing those which have the least flaw.
- To lower morale and with it, production, be pleasant to inefficient workers; give them undeserved promotions.
- Hold conferences when there is more critical work to be done.
- Multiply the procedures and clearances involved in issuing instructions, pay checks, and so on. See that three people have to approve everything where one would do.
Employees
- Work slowly
- Work slowly.
- Contrive as many interruptions to your work as you can.
- Do your work poorly and blame it on bad tools, machinery, or equipment. Complain that these things are preventing you from doing your job right.
- Never pass on your skill and experience to a new or less skillful worker.